恋色カフェ


いけないいけない、今は仕事中だ。勝沼は来店した客に笑みをつくった。



──余裕ないな、俺は。


彗は勝沼が尋ねた時、何も言われていないと言った。それは多分、本当だろう。

だとしたら、あの男は何故わざわざあんなことを言ったんだ?



辛い言葉を聞くことになるのが怖くて、それを阻止し、彗を困惑させているのはよくわかっている。

それでも、この想いを中途半端で葬り去ることは出来ない。


まだ、少しでも望みがあるのなら。



「すみません、オーダーいいですか?」

「かしこまりました」


このエプロンは絶対汚さないようにしよう。

勝沼はキッチンに向かいながら、小さな決心をした。



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