恋色カフェ
「彼を甘やかしていたのは、私なの」
勝沼君はコーヒーのカップを口に近づけたまま、こちらをじっと見て固まっている。
「あ……ちょっと違うかな。自分の罪悪感を少しでも減らしたくて、そうしてたっていうか」
「……罪悪感?」
この先を話すのを、私は少しだけ、躊躇した。秀人のことを話し始めれば、ここに辿り着くのは目に見えていた筈なのに。
本当の私を勝沼君に知ってもらえるいい機会じゃない。そう思いながらも、彼に軽蔑されるのをどこかで恐れている自分がいる。
私は、どこまで勝手なの。
「彼を……利用していたから」
「……えっ」
「店長を忘れる為に、彼を、利用していたの」
その言葉を口に出した瞬間、心に、何かが押し寄せてきた。胸が、目の奥が、熱い。喉が苦しい。