恋色カフェ
「好きだって言ってくれる人と一緒にいれば、私もきっとその人を好きになれる、店長のことは忘れられるって思って……
でも、忘れられなかった……っ」
涙で、視界が滲む。
秀人に対して申し訳ないという気持ちが溢れたのか、それとも違う感情なのか、当の本人がわからないんだから、どうしようもない。
勝沼君から差し出されたハンカチを、ありがとう大丈夫、と断り、鞄から自分のハンカチを取り出した──つもりだった。
私が手にしていたのは、深いグリーンの男物のハンカチ。ずっと、返しそびれていたもの。
もう涙を沁みこませてしまった。今更、鞄には戻せない。
勝沼君は俯き、ため息のように息を吐くと、自分の髪をクシャリとさせた。