恋色カフェ



「……彗さんって、前から店長のことが好きだったんすか」


勝沼君の様子から、間違いなく呆れられたのだと思っていた。でも、どうやらそうではなかったらしい。

もう一度目の前の彼は息を吐いて、俯いたまま目線だけを私に向けた。


「話してなかった、よね……」

「初めて聞きました」

「……ごめん」


何に対しての、ごめん、なのか、自分でもよくわからない。思わずそれが口を衝いて出たのは、どこか、後ろめたい気持ちがあるせいだ。



「前は、理英さんがいましたよね」

「……うん」

「それでも、好きだったんすか」


言葉を詰まらせた私に勝沼君は、別に責めてる訳じゃなくて、と付け足す。



「…………だから、忘れようとしたの」


< 388 / 575 >

この作品をシェア

pagetop