恋色カフェ
でも、忘れることなんて出来なかった。心の片隅に、ずっと店長の存在があった。ただ、それを見ないふりしていただけだ。
秀人がそれに気づいていたかはわからない。
いや、気づいていた……多分。
だからいつの日からか、秀人の考えていることも、日々何をやっているのかもわからなくなって、ただ時々会ってご飯を食べるだけの、友人の延長みたいな付き合いになっていったんだ。
近くの席が空いて、テーブルを片付けに来ていた店員さんと目が合う。ハンカチで目を押さえていたから、何事かとこちらを窺っていたのだろう。
「そろそろ、出ない……?」
もう、2人共コーヒーを飲み終えている。
勝沼君が私を泣かせていると勘違いされて、彼がここに来づらくなったら気の毒だ。