恋色カフェ
肌はあっという間に湿気でべとつく。見上げれば街灯の光がぼうっと、靄の中にぼやけている。
「……勝沼君」
沈黙に耐えきれず、私は半歩前の彼に声を掛けた。
「幻滅、したでしょ……?」
今「はい」と言われたら、勝手だけど、さすがにこたえる。わかっていながら、それでも口に出さずにはいられなかった。
「私は、勝沼君に想ってもらえるような人間じゃないの」
そう言うと。勝沼君がふと、歩みを止めた。
「店長になら、いいの?」
「……え」
「あの人はサイテーな人間だから、それなら自分と釣り合うって言いたいの?」
それだけ言うと、私の返答を待つ訳でもなく、また前を歩き出した。