恋色カフェ


肌はあっという間に湿気でべとつく。見上げれば街灯の光がぼうっと、靄の中にぼやけている。



「……勝沼君」


沈黙に耐えきれず、私は半歩前の彼に声を掛けた。


「幻滅、したでしょ……?」


今「はい」と言われたら、勝手だけど、さすがにこたえる。わかっていながら、それでも口に出さずにはいられなかった。


「私は、勝沼君に想ってもらえるような人間じゃないの」


そう言うと。勝沼君がふと、歩みを止めた。



「店長になら、いいの?」

「……え」

「あの人はサイテーな人間だから、それなら自分と釣り合うって言いたいの?」


それだけ言うと、私の返答を待つ訳でもなく、また前を歩き出した。


< 391 / 575 >

この作品をシェア

pagetop