恋色カフェ
目の前の、影を纏った後ろ姿に、今どんな言葉をかければいいのかわからなくなった。私が何かを言えば言う程、傷つけてしまいそうで。
……どうしようもない自分に、心底嫌気が差す。
結局、それからお互いに何も話さないまま、アンバーの前に着いてしまった。
店から漏れる灯りは無く『close』のプレートと、臨時休業と書かれた張り紙が暗闇の中に浮かんでいる。もう作業は終わったのだろう。
小さくため息を吐いて、勝沼君の後を追いかけ、従業員口に近づいた時だった。
「リックと高宮さんじゃない」
暗闇の中に、やけに明るい声が響いた。
「なーに、またデート?」
重ねて、からかう声が飛んでくる。
街灯に照らされた万由さんの横に視線を振れば──そこにはやはり、もう一人。