恋色カフェ
2人の会話は淡々と事務的に進んでいく。そこに、無駄に明るい万由さんの声が混ざリ合う。
「じゃ、戸締りよろしく」
店長が、足を踏み出した気配がした。私は顔を上げられないまま、とりあえず勝沼君の後ろをついていく。
「……ああ、勝沼」
私達の横を通り過ぎる時、店長は勝沼君を呼び止めた。
「なんすか」
「ちゃんと、高宮さん送って行けよ」
急に名前が呼ばれ、心臓が跳ね上がる。と同時に、何かが刺さったのもわかったが、気づかないふりでやり過ごす。
「さあ、どうすかね」
耳を疑い、思わず勝沼君の方を向いた。
「もしかしたら、寄り道するかもしれないし」
一瞬、この場に妙な間が開いた。