恋色カフェ
「──ねえ、店長。私達も食事に行きましょうよ」
場の空気を無視したように、静寂を破ったのは、万由さん。
「店長も私も、今日まで一生懸命頑張ってきたんですから、2人でお疲れさま会やったっていいと思いません?」
それでも店長はまだ、勝沼君と顔を見合わせたまま。
「聞いてます?」と問われ、店長はようやく万由さんの方に顔を向けた。
「いいですよね?」
万由さんはそう言って、妖艶に微笑んで見せる。
「……ああ」
「やった、嬉しいー」
いつもは落ち着いた態度でいることの多い彼女が、子供のように声を上げてはしゃいでいる。
私はもう振り返ることのない、白いシャツの後ろ姿を、ただ見つめていた。
──行かないで。
胸は、痛みを伴いながらそう悲鳴を上げている。
自分は、勝沼君と一緒にいたくせに。