恋色カフェ
彗さん、と勝沼君に呼ばれるまで、私は暗闇の中、2人の姿をぼんやり追い続けていた。
「中、入りましょう」
従業員口の扉は既に開いていて、勝沼君はノブを押さえ、私に中へ入るように促す。
「いないとも、限らないし」
そう言われるまで、秀人のことは頭から抜けていた。……さっきまでは、彼のことで頭がいっぱいだったのに。
今日はどうして、こんなにもいろんなことが次々と起こるのだろう。
廊下の電気をつけ、先に勝沼君を行かせると、私は彼の後をついて階段を上る。
休憩室に入って、勝沼君はロッカーを開け携帯を取り出している。どうやら無事にあったようだ。
「付き合ってもらってすんません」
そう言った勝沼君に釈然としないものを感じて、私は疑問を口にした。