恋色カフェ
その後、私は勝沼君に送られて家に帰った。
大丈夫だから、と何度も言ったのだけど、勝沼君は折れることはなく。結局、2人でタクシーに乗った。
タクシーの中ではお互い、言葉を発することはなかった。
私も勝沼君も、ただ窓の外を見ていた。彼の方を向くことはなかったけど、窓にもう一方が反射して映っていたからわかる。
気まずい、というより、今何を話したらいいのかわからなかった。多分、勝沼君もそうだったのだろう。
アパートの前に着いてようやく、勝沼君は
「シカトとか、無しっすよ」
と無理矢理作ったような笑顔でそう言った。
──大丈夫。わかってる。
しばらくは、元のようにはいかないかもしれないけど、恩人の彼をそんな風に扱ったりなんか、絶対にしない。絶対に。