恋色カフェ
世の中は、人間は、何故簡単にいかないのだろう。
あんなにもストレートに気持ちを伝えてくれたのに。私は。どうしても勝沼君の気持ちに応えられない。
そして、私が応えてほしい人は──。
(……コーヒー、飲もう)
新しいアンバーのブレンドを試飲させてもらった時、店長から挽いた物も少し貰っていた。
コーヒーメーカーにセットして電源を入れる。コーヒーの芳しい香りが、部屋中に広がった。
「アンバーに、いるみたい」
気になって、恐る恐る、携帯を手に取る。が、メールは無し。当たり前、か。
あれから、店長と万由さんはどうしたのだろう。
「……苦っ」
分量を間違えたのか、店長があの時淹れてくれたものより苦い。
────『悔しいけど、そういう腕だけは凄いんすよね、あの人』
いつかの、勝沼君の言葉が蘇る。
店長が淹れてくれたコーヒーが、無性に飲みたくなった。