恋色カフェ
お店には、開店と同時にかなりのお客様が来てくれたらしい。
リニューアル記念で、先着30人にプレゼントしたコーヒーの欠点豆を再利用したサシェは、あっという間に無くなったとフロアスタッフが興奮気味に話していた。
盛況で良かった。そう嬉しく思う裏側で、心にどこかすきま風が吹いたような寂しさを感じてしまう。
これだけは未だに、なかなかうまく折り合いがつけられない。
そんなことを考えながら、伝票に目を落としている時だった。
一本の内線が、状況を一変させた。
《遅番出勤の時間なんですけど、万由さんがまだ来てないんです》