恋色カフェ
電話の向こうの怜ちゃんは、どうしましょう、と困惑した声を震わせている。
「店長には話したの?」
《いえ、ちょっと接客中で……あ、今終わったみたいなんで、話してみます》
ガチャリと、雑に受話器が置かれた音が耳に響き、私は顔をしかめてしまった。怜ちゃんは、いつもはそんな風に乱暴に電話を切る人ではない。余程慌てていたのだろう。
時計を見ると、確かに遅番の出勤時間から既に、10分程経過している。
一体、どうしたのだろうか。
彼女はいつも、遅刻は絶対にしない人だ。むしろ万由さんのことだから、リニューアルオープン初日の今日は、張り切って早番シフトと同じ時間帯に出勤するかと思っていたのに。