恋色カフェ
「え……あの、」
万由さんはどうしたんですか。
それを訊こうとした時には既に、受話器からはツーツーと無情な音が繰り返し流れていた。
「エプロンに着替えて、って……」
戸惑いを覚えつつも、私は倉庫から新しいエプロンを取ってきて腕を通す。糊のきいたそれはまだ身体に馴染まず、どこかしらぎこちなさを見せている。
(とにかく、行かなくちゃ)
もうそろそろお昼時に差し掛かる。私は事務所を飛び出し、階段を駆け下りた。そう言えば全然チェックしてなかったな、とフロアに向かう廊下で、身だしなみ確認用の鏡に自分を映してみる。
ドクドク、と鼓動が身体を駆け上がっていく。自分の、この姿を見るのは3年ぶりだ。