恋色カフェ
それを聞いて、思い出した。
自分もフロア業務だった時、事務所で理英さんに「お疲れ様」って声を掛けてもらえると、何となくホッとした。
私も、理英さんのような存在になれたってこと……?
「……まあ俺は、ホッとするってだけじゃないけどね」
近くから突然、ヒューと口笛の鳴る音。どうやら私達の会話が聞こえていたらしく、勝沼君はそのスタッフにからかわれている。
耳が真っ赤だ。こちらまでつられて顔が熱くなってしまう。
「その、だから、ってああもう! 喋りにくいっ。あっち行こう」
勝沼君は私の背中を押して、奥の廊下へと誘導する。後ろからは相変わらずはやし立てる声が聞こえてくる。隣の彼は、クソ、と舌打ちしながらも、まだ顔が赤い。