恋色カフェ
「──高宮さん」
不意に真横から投げられた声が、固まっていた私を動かす。
「は、はいっ!?」
「ちょっと、いい?」
キッチン側の扉から廊下に出たのだろうか。店長は階段の下に立っていて、私と目が合うと事務所の方へと顎をしゃくった。
……いつから、そこに居たの?
「ご、ごめん、勝沼君」
突然のことで、勝沼君も呆然としている。どうやら店長の姿は、彼の視界にも入っていなかったようだ。
私は店長の背中を追いかけて、階段を上る。一瞬、勝沼君の方に視線を振ると、彼はその場から動かず、こちらを見ていた。
私は、ごめんなさい、と心で呟きながら、振り払うようにして彼から視線を外した。