恋色カフェ
──────……
一体、何が起きた……?
勝沼は、店長を追いかける彗をただ呆然と見つめていた──と言っても本当のところ、彼女に焦点が合っていたかもわからない。
こういうのを、鳶に油揚げを攫われる、というんだろうか。
……いや。元々この“油揚げ”はアイツから盗み出してきたものだ。最初から手に入るものでもなかったのかもしれない。
──追いかけようか。
一瞬浮かんだ思考を、勝沼は頭からすぐに追い出した。
さっきの、彗に言った台詞を思い出しただけでも、あまりのカッコ悪さに時間を巻き戻したくなる。これ以上、恥を上塗りする訳にはいかない。
「どこまで女々しいんだ、俺は……」
小さく吐き捨てる。自分に、言い聞かせるように。