恋色カフェ
店長は私の言葉にぎょっとした顔をしてから、これでもかという程、盛大にため息を吐いた。
「そんなの、俺が許す訳ないでしょ」
灰皿に煙草を強く押しつけながら、店長はまたため息を吐いている。
「高宮さんをここに引っ張ってきたのは、俺だよ?」
「それは……そうですけど……」
「高宮さんが働きやすいよう、職場の環境を整えることも、当然、俺の義務だと思ってる。
少し前の妙な噂の話じゃないけど、その点でいけば高宮さんは“特別待遇”ということになるのかもしれない。……でも」
店長は俯き、額を手で押さえた。
「雇用した時の状況がみんなとは違うんだから、そんなの当然だろ?
店の責任者が『働かないか』って引っ張ってきて、今までの職場よりも環境が劣悪だった、なんて、笑い話にもならない」
私は、店長の勢いに圧倒されて、ただ黙って彼を見つめていた。
こんな店長、見たことがない。