恋色カフェ
……というより。もしかしたら私は、森谷煕という人間をちゃんと理解していなかったのかもしれない。
今まで、彼のどこを見ていたのだろう。
「……それから。カッとした勢いで言葉を口にする癖、直した方がいい」
突然、話の矛先が変わって、虚を衝かれる。
しかもその“矛”は確実に胸に刺さった。
「たとえ正論であっても、不利になることも多いから」
店長は、容赦なく私を打ちのめす。
3年前のあの時、私はそれが不利に繋がるとは全く考えてなかった。とにかく上司だろうが何だろうが、相手に真っ向から意見をぶつけることが正しいと思っていた。それで何かが変わるなら、と。
いや……ちょっと違う、か。
自分がやらなければ誰も意見できる人はいないと、勝手に思い込んでいたのかもしれない。
驕り──それが全て招いたこと。
それで最終的には、自分の大事な場所を失うことになってしまった。
「……すみません」
顔が、熱い。自分の稚拙さが恥ずかしくなって、俯きながら小さくそう零す。
店長が近づいてきた気配がしたと思った瞬間、私の頭に彼の手が乗せられた。