恋色カフェ
仕事を終え、ロッカーを開けたと同時に、自然とため息が出た。
久しぶりの立ち仕事で、その上2日続けてのフル勤務。疲れない訳が無い。
軽く上半身を伸ばすと、あー(実際にはそれに濁点が付く)、と年に似合わない声が出てしまった。
……今、休憩室に誰も居なくて良かった。
(あれ……着信?)
携帯の表示に気づき、メールを開くと、それはあかねからだった。
“何かあったら、絶対連絡ちょうだいね。心配でしょうがないよ”
仕事中は努めて、あのことを思い返さないようにしていた。そのうち忙しくなって、本当に考える暇はなかったけど。
(送ってもらえ、か……)
一体誰に、送ってもらえと言うのだろう。
店長は夕方、本部の方へ行ってしまった。かと言って、今彼が店に居たところで、送っていって下さい、なんて言える訳がない。
時計を見る。20時15分。この時間ならまだ、あそこは営業している筈。
真っ直ぐ帰るのも躊躇われて、私は疲れた体を励ましながら、ある場所に向かった。