恋色カフェ
真実
■□■□■□■
「あまりに驚いて、息吸うの忘れちゃった」
そう言って、目の前の人──店長の元奥様、理英さん──は艶やかに微笑んでいる。
先に気づいたのは彼女の方。突然名前を呼ばれて、心底驚いた。
このベーグルカフェはどうやら、懐かしい人と再会出来る場所、らしい。
「実は、森谷店長ともこの場所で偶然会ったんですよ」
「えー! ここだったんだ」
ああ……そっか。店長から聞いていたんだ。
元奥様なんだから、連絡し合っていてもおかしくないとわかっているのに。なかなかその事実を飲み込めなくて、困る。
私は、理英さんと視線を合わせていられなくなって俯く。それを誤魔化そうと、ベーグルをかじった。
「聞いた聞いた。彗ちゃん、アンバーに戻ってきたんでしょ?」
「……はい。丁度仕事探してたところだったので、拾ってもらえたというか」
「それも凄いタイミングよね。煕さんと再会した時が、無職だったなんて」
愉しそうにそう言って、理英さんもベーグルをかじっている。