恋色カフェ

真実


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「あまりに驚いて、息吸うの忘れちゃった」


そう言って、目の前の人──店長の元奥様、理英さん──は艶やかに微笑んでいる。



先に気づいたのは彼女の方。突然名前を呼ばれて、心底驚いた。

このベーグルカフェはどうやら、懐かしい人と再会出来る場所、らしい。



「実は、森谷店長ともこの場所で偶然会ったんですよ」

「えー! ここだったんだ」


ああ……そっか。店長から聞いていたんだ。

元奥様なんだから、連絡し合っていてもおかしくないとわかっているのに。なかなかその事実を飲み込めなくて、困る。


私は、理英さんと視線を合わせていられなくなって俯く。それを誤魔化そうと、ベーグルをかじった。


「聞いた聞いた。彗ちゃん、アンバーに戻ってきたんでしょ?」

「……はい。丁度仕事探してたところだったので、拾ってもらえたというか」

「それも凄いタイミングよね。煕さんと再会した時が、無職だったなんて」


愉しそうにそう言って、理英さんもベーグルをかじっている。


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