恋色カフェ
語気を強めた私に、万由さんは少し怯んだようだ。視線を彷徨わせている。
「自分の思い通りにならなかったからって、早々に尻尾巻いて逃げ出そうとするなんて、そんなの赦さない。
あなたを、簡単には辞めさせない」
彼女は瞠目してから、また険しい顔つきになった。
「は! 何それ。私をアンバーにいさせて苦しめて、それを側で面白がって見てやろうってこと?!」
「違う」
「じゃ、何だっていうのよ。これだけ無断欠勤もしたし、スタッフからの信用だって無くなってるわ。今まで築き上げてきた信用が……。そんな中にいさせるなんて、拷問以外の何物でも無いわ」
万由さんはまた、瞳いっぱいに涙を溜めている。
「……本当に、どこまでも自分勝手なのね」
私の中で、苛立ちと共に、あの時の辛さと悲しみがせり上がってきた。奥歯を、ぐっと噛みしめる。
「あなたはスタッフみんなにデマを流して、私をそういう目にあわせたじゃないの」
ようやく、自分がしたことの重さに気がついたのか。万由さんはハッとして、バツ悪そうに俯いた。