恋色カフェ
「……復讐ってこと?」
しばらくしてから、万由さんはぼそりと零す。
「それも違う」
復讐でそんなことをしたって、私の気が晴れる訳じゃない。むしろ、自己嫌悪に陥るだけ。
──私はただ。
アンバーが好きなだけ、なんだ。
「万由さんは、アンバーに必要な人だと思うから」
万由さんの代わりに久しぶりにフロアに立った時も、能力の高さをまざまざと見せつけられた。店長と感性だって似ている。
悔しいけど、私よりもずっと万由さんの方がアンバーに貢献出来る。
「は……、何それ。バカじゃないの」
呆れた顔で立ち上がりかけた彼女に、言葉を投げつけてやる。
「……卑怯者」
私も勢いに任せて随分と言うもんだと、心の中で苦笑い。
「卑怯者でも何でもいいわ。好きにして」
テーブルの上の、破られた退職願を手にして、万由さんは私に背を向けた。