恋色カフェ


こちらへ真っ直ぐ視線を向けた万由さんの揺るぎない瞳に、嘘は無いように思えた。

私は、掴んでいた手を離す。


「……アンバーに、行けばいいんでしょ」


彼女は観念したように、ボソリと呟いた。




会計をしている間も、万由さんは逃げる素振りを見せることもなく、じっと私の側に立っていた。


「ご迷惑おかけして、すみませんでした」


完全な営業妨害だったな、と会計を済ませた後、店員の男性に謝罪すると、彼は薄く笑みを浮かべた。


「いえ。良かったらまたいらして下さい」


────彼の穏やかな物腰は、誰かを思わせる。


「ありがとう、ございます」


アンバーに帰りたい。早くあの場所に、あの人の所に。無性に、帰りたくなった。



彼に深々とお辞儀をしてから、万由さんと店を出た。

さっきより高く昇った日が、じりじりと照りつけてくる。


「高宮です。これから万由さんをお店に連れていきます」


電話に出た店長にそう言うと、彼はさっきと同じように、わかった、とだけ言った。



アンバーは、もうすぐだ。



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