恋色カフェ
◇残り香
感情
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乱れていた雑貨を、並べ直す。そういえば、この間発注した宇津木屋の巾着が、事務所に届いている筈だ──とは思ったものの。
私は、廊下へと続く扉に目をやった。
「……万由さん、どうなっちゃうんでしょうね」
いつの間にか隣に来ていた怜ちゃんは、心配そうな顔をこちらに向ける。
「……辞めさせられちゃうのかな」
怜ちゃんも一緒になって、雑貨を直す。どうやら私が来る前まで、そこそこ店は混んでいたらしい。少し、申し訳ない気持ちになる。
「大丈夫だよ、きっと」
──従業員口の扉を開けると、店長は無表情で私達を待ち構えていた。
『万由さんを辞めさせないで下さい』
「話が終わるまで、誰も事務所に入れないで」とだけ言って立ち去ろうとした店長の背中に、私はそう言葉を投げつけた。
一瞬、驚いた顔をこちらに向けたけど、特に返答することなく、彼は万由さんを連れて事務所に入っていってしまった。
今、2人の間でどんな話し合いがなされているのだろう。