恋色カフェ
「……ごめん。話が、よく見えないんだけど」
確かに、万由さんも“復讐”という言葉を使っていた。
──でも。状況を知らない勝沼君までが、どうしてそんなことを言えるのだろう。
「ああ……そうっすよね」
勝沼君は硬い表情のまま、無理矢理笑顔をつくる。
「……って言うか、それを言おうと思って呼んだんだけどね。万由さんと店長が、店に戻ってこないうちに」
休憩室に入った時つけた空調が、しんと静まり返った部屋に、ぶーん、と音を響かせた。
「最初から、知ってたんすよ」
「知ってたって……何を?」
「店長の、気持ちを」
まだ意味がよく分からず、首を傾げてみせる。勝沼君は窓の外に視線を送りながら、続けた。
「彗さんがアンバーに入る前から、店長が彗さんのことを好きだって、知ってたってこと」
「……え」
ドクン、と胸が鳴る。『好き』という単語だけが、心の中で一人歩きをし始めたせいだ。
──違う。今はその言葉が大事なんじゃなくて、もっと訊かなければいけないことが……。
「俺はそれを知っていて、店長から横取りしようとしてたんすよ」