恋色カフェ
ね、卑怯でしょ、と笑った勝沼君の声は掠れていて、耳にちぐはぐに届く。
「彗さんがアンバーに入るずっと前、店長に訊いたことがあってね。
『どうしていつも似たようなタイプの女の子なんすか』、『よっぽどああいう感じの子が好きなんすか』って。
その時、店長が言ったんだ」
勝沼君はこちらを真っ直ぐ見据えて、今度は無理矢理じゃなく、ちゃんと笑みを浮かべた。
「『意識したつもりはなかったけど、多分俺の頭の中にはいつも、ある女の子が浮かんでいるからかもしれない』って。
その後、はっきり言ってたよ。『高宮彗っていう名前』なんだ、ってさ」
鼓動は速さを増した。昨日の理英さんの話、今日の万由さんの話が一気に頭の中に押し寄せる。点の集合体だったものに一瞬で線が引かれていくような、パズルのピースが埋まっていくような、感覚。
本当に本当、だった……?
「理英さんがいるっていうのに、この人はどこまでも最低なんだな、と思って忘れてたんだけど……。
店長が彗さんを店に連れてきた時、手を出すなって言われて思い出した。“彗”って名前が変わってたから、何となく記憶に残ってたんだよね」