恋色カフェ
勝沼君は休憩室のロッカーにとん、と背中を凭れさせた。ひんやりする、と笑う。
「店長は計算外だっただろうね。俺が彗さんを……好きに、なったことが。そんなリスク冒す訳ないって、普通なら思うだろうし」
勝沼君は泣きそうな顔のまま微笑む。それを見ていられず、私は床へと視線を逃がした。
「……店長の気持ちを知っていても、抑えることなんか出来なかった。
だから俺は、店長が不利になるようなことばかり彗さんに吹き込んで、その上、2人で一緒にいるところをあいつに見せつけて……卑怯なことをした」
「そんな、卑怯、なんて……」
「十分卑怯でしょ。俺は、勝ち目のない闘いに勝とうと必死だったんすよ。どんな汚い手を使ってでも、彗さんを……って」
どう反応すればいいのかわからず、顔を上げることが出来ない。
勝沼君はふ、と小さく笑うと「あーあ」とため息とも違う声を上げた。
「わかったでしょ、俺がどんな人間か。彗さんが言うような綺麗な人間じゃない。
店長の気持ちも彗さんの気持ちも知っていて、それでも強引に、彗さんを自分のものにしようとしていたんだから」