恋色カフェ
「勝沼君は、自分にも私にも、正直でいただけだよ」
私は、何もかも本心を曝け出して、突き放されるのが怖かった。臆病過ぎて、動けなくなっていた。
「今だって黙っていてもいいことなのに、私に正直に話してくれたじゃない。そういうのは卑怯とは言わないでしょ。むしろ、誠実だよ」
勝沼君は決まりの悪そうな顔で俯く。
「私も、ちゃんと最初から素直でいれば、勝沼君にだってこんな思いをさせなくてすんだかもしれないのに……」
「さあ。それはどうか、俺にもわからないっすけどね」
勝沼君はエプロンのポケットに両手を突っ込んで、ふふん、と笑う。
「勝沼君みたいに、正直にぶつけなければ、伝わらないこともたくさんあるのにね」
「……ぶつけても、報われないこともあるけどね」
勝沼君はわざといじけた素振りを見せる。
「勝沼君の気持ち、凄く凄く、嬉しかった。一生忘れない」
私は、彼を真正面に捉えた。
言って、胸が詰まる。申し訳ないという気持ちと、ありがとうの気持ちが混在して、自分でも何だか分からない。歯を食いしばっていないと泣きそうだ。
私は無理矢理立て直し、勝沼君に笑顔を向けた。
「どうなるかわからないけど、やっぱり私は……森谷店長のことが好き、なんだ。
勝沼君が私へ真っ直ぐ向かってくれたように、私も、店長に真っ直ぐ気持ちをぶつけてみようと思う」