恋色カフェ




──廊下へと続く扉が開いたのは、あれから一時間程経過してから。


お店もそれなりに混んでいて、静かとは言えない環境な筈なのに。ガチャリと開いた音に、スタッフみんなが反応した。

出てきたのは、店長一人。


「土屋は、明日から復帰してもらうことにした」


店長は真っ先にこの雑貨コーナーに近づいて、そう言った。隣にいた怜ちゃんは、良かった、と声を上げる。


「土屋はスタッフ全員に謝りたいって言ってるんだけど、さすがに開店中に店でそれをさせる訳にはいかないから。フロアスタッフだけ行かせる、と言ってある」


そう言って店長は、今いるフロアスタッフ全員と私を、廊下へと促す。

廊下に出てみるとそこには、泣き腫らした目で申し訳なさそうに立っている万由さんがいた。



「ごめん……なさい。無断で何日も休んで、迷惑を掛けて……。みんなに許してもらえるとは思っていないけど……」


万由さんは弱々しい声で謝罪の言葉を口にすると、体をこれでもかと折り曲げて、深く頭を下げている。


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