恋色カフェ




「あぅ…………」


あまりのことに驚き、妙な声を上げてしまう。

笑われるかと思ったのに。店長は更に強い力で私を抱きしめた。




「……わからなかったのは、俺だって同じだよ」

「……え、」


私を自分の胸に押し付けたまま、続ける。


「土屋のことを、俺にじゃなく勝沼に相談したり、俺と……付き合ってる訳じゃないって、勝沼に話したり」

「それは……」

「彗なりに考えてのこと、だったんだろう?」

「……はい」

「それぐらい理解しているさ、俺だって。理解は、していたんだ……」


店長は、まるで自分に言い聞かせるようにそう言った。



「再会してからずっと、強引だったからね、俺は。もしかしたら、断れないまま仕方無くいたのか、って……」


今、店長はどんな顔をしているのだろう。

あの1回目の告白の時の、カウンターの所で見せた弱さが、今も声に滲んでいる。


「そんなこと……ある訳ないじゃないですか」


気が付けば、涙声になってしまっていた。


店長は私の耳許で「凄くかっこ悪いな、俺」と呟く。無理矢理首を横に振ってみせると、店長はふ、と笑った。


< 523 / 575 >

この作品をシェア

pagetop