恋色カフェ
「あぅ…………」
あまりのことに驚き、妙な声を上げてしまう。
笑われるかと思ったのに。店長は更に強い力で私を抱きしめた。
「……わからなかったのは、俺だって同じだよ」
「……え、」
私を自分の胸に押し付けたまま、続ける。
「土屋のことを、俺にじゃなく勝沼に相談したり、俺と……付き合ってる訳じゃないって、勝沼に話したり」
「それは……」
「彗なりに考えてのこと、だったんだろう?」
「……はい」
「それぐらい理解しているさ、俺だって。理解は、していたんだ……」
店長は、まるで自分に言い聞かせるようにそう言った。
「再会してからずっと、強引だったからね、俺は。もしかしたら、断れないまま仕方無くいたのか、って……」
今、店長はどんな顔をしているのだろう。
あの1回目の告白の時の、カウンターの所で見せた弱さが、今も声に滲んでいる。
「そんなこと……ある訳ないじゃないですか」
気が付けば、涙声になってしまっていた。
店長は私の耳許で「凄くかっこ悪いな、俺」と呟く。無理矢理首を横に振ってみせると、店長はふ、と笑った。