恋色カフェ
不服を唱える代わりに、少しだけ店長を睨んでやる。そんな怖い顔しないでよ、と苦笑しながら私の頬に指を這わせて――。
淡く、唇を重ねた。
「……また、そうやってごまかすんですか」
「ごまかす、ってなんだよ」
「だって前も……」
「あのね」
今度は、さっきよりもはっきりと感触を残すようにキスを落とす。
「伝わらない?」
「……伝わりません」
店長は、はあ、と盛大にため息を吐き出し、髪をくしゃりと乱す。
「だってさっき、言葉が足りなかったって、自分で言ったばかりじゃないですか」
「それは、言ったけど……」
店長の手が、私の両頬を包み込む。
さっき指が触れた時も思ったけど、店長の手は少しひんやりしている。夏に近づいた今は、その温度が気持ちいい。
しばらく、無言のまま見つめ合う格好になって、焦る。目の前のこの人は、一体何を考えているのだろう。
視線を逸らそうかと思った時――また、唇が奪われる。
まるで、逃がさないとでもいうように。