恋色カフェ
「――――好きだよ、彗」
観念したのか、店長は唇を離すと、耳許でそう囁いた。
ずっと、私はこの言葉を待ち望んでいた――。
でも夢心地だからか、それはなかなか心にまで沁みていかない。まだ、ふわふわと宙を漂っている。
「……わかった?」
「…………はい」
「いや、わかってない」
確かに夢心地ではあるけど……。
言葉の意味はもちろん理解しているつもりだし、店長の目を見れば、それがうわべだけのものではない、というのもわかる。
わかってない、って。そう見えるんだろうか。
「まったく」
そう言って小さくため息を吐いて、店長はこちらに顔を近づける。
唇が触れるか触れないかのところで止まり、彼は口角に見事な弧を描いた。
「人の気も知らないで」
唇に、彼の息がかかる。それが、キスするよりも妙に厭らしさを感じ、ドキリと心臓が跳ねる。
「あ、の……」
堪らず目を伏せると、それが合図になったように唇が触れる。
――が、それは今までのものとは明らかに違った。