恋色カフェ
「そんなに嫌だった?」
「……え」
「強引なの」
店長は私を見下ろしたまま、困ったように微笑む。
「嫌っていうか……」
求められるのは、嫌じゃない。嫌じゃないけど……何だろう。自分でもすぐには答えが出てこない。
店長から視線を外し、考えを巡らす。
――と、ふいに手が伸びて、私の前髪を綺麗な指が撫でる。その柔らかな刺激に、ざわりと肌が粟立った。
「この際だから、正直に言うけど……。
俺が強引だったのは、必死だったからだよ」
意外な言葉に驚いて、店長の方を向いた。柔らかさと熱さを併せ持った双眸が、こちらをじっと見据える。
気圧され、捉えられて。もう視線は逸らせない。
「掴まえたと思った途端、スルリと腕から逃げ出していきそうで。だから、強引にでも繋ぎ止めたかった」
こんなことって、あるんだろうか。
2人で、同じことを思っていたなんて。
それで、お互いにすれ違っていたなんて。