恋色カフェ
「逃げたりなんか、する訳ないじゃないですか」
そうか、と。一瞬で何かが、胸にストンとはまったような、そんな感覚が襲う。
「……多分、強引なのが嫌なんじゃなくて、気持ちが繋がっていなかったのが、嫌だったんだと思う」
「俺が、好きだって言わなかったから?」
「それも、あるけど……
捨てられるのが怖くて、私も素直になれなかったから」
貪るように求められて、そのうち全て食べ尽くされたら、私はどうなってしまうんだろう、って……ずっと、不安だった。
「捨てるなんて……そんなことする訳ないでしょ」
「だって、いろいろ噂を聞いてたし……」
店長は、あー、と呻き声を上げて項垂れる。
「こんなところでそれが、足枷になるとはね」
でも普通に考えれば当然か、とか、店長はブツブツ呟いている。
「やっぱり、言葉が足りなかったんですよ、私達の間には」
「……そのようだな」