恋色カフェ
店長は、はあ、と一度大きくため息を吐くと、今度は何かを企んだような笑みを浮かべた。
「さっき、強引なのは嫌じゃないって言ったよね?」
「そ、んな風には言ってな……」
「強引が嫌じゃないなら」
店長はソファーから手を離すと、私の左手を握る。
「来て」
「……っえ?!」
そのまま手を引き上げ、本当に強引に立たせると、逃がさないとでもいうように私の肩を抱いた。手際よく事務所の照明のスイッチを消し、後ろ手で扉を閉める。
「ちょっ……て、店長、一体何……」
「彗」
「……え?」
「もうプライベートの時間でしょ」
「……」
「さっきは名前で呼んだくせに」
「え、名前……?」
「ここから先、俺を店長って呼んだら、どんなお仕置きしてやろうか」
肩を抱かれているせいで、妖艶に微笑んだ店長の顔が間近に見える。
この距離でその顔はやめてほしい。心臓が、もたない。
「ああ、そうか。彗はお仕置きしてほしいんだったっけ」
「なっ……してほしくなんかありませんっ」