恋色カフェ
「……傷つきませんよ」
店長から視線を外し、私も真正面を見据える。
「むしろ店……煕さんは、私とそうなりたくないんだと思って……正直、寂しかったです」
店長がこちらを向いた気配がする。私は恥ずかしくて、彼の方を振り向けない。
「そうなんだ。彗は、寂しかったんだ」
「…………はい」
自分の言ったことを改めて人の口から聞かされると、冷静に耳に入るせいか、とんでもないことを言ってしまったような気にさせられる。
……いや、実際とんでもないことを言ってしまったのかもしれないけど。
顔がみるみる熱を帯びていくのが、自分でもわかった。
「そんなに俺とシたかったんだ」
「や、やめて下さいよ、そんな、下品な物言い……」
「ああ、ごめんごめん」
チラリと店長の方を覗き見ると、ごめんと言う言葉とは裏腹に、全く悪びれる様子もなく楽しそうに笑っている。
私から言わせて、結局、からかって面白がっていたんだ、この人は。
――悔しすぎる。あの顔に、すっかり騙されてしまった。