恋色カフェ
「そんな顔しないでよ」
そんな顔にさせたのは誰なの、と心の中で悪態をつく。口に出さなかったのは、そこまでの勇気がなかったから。
私はまだどこかで、彼の気持ちを疑ってしまっているのかもしれない。
好きだと、私の欲しかった言葉を言ってもらえたというのに。好きな人の言葉を疑うなんて、最低だと自分でも思う。
私が素直じゃないからなのか、夢心地で今一つ現実味が無いせいなのか。
何にせよ、些細な一言で脆く崩れてしまいそうで、不用意に口を開けない。
店長はそれ以上何も言わず、私の頭に手を乗せ、ポンと一度軽く叩いてから、車を発進させた。
しばらく静寂に包まれていた、車内。先に沈黙を破ったのは、店長だった。
「あのバイク……」
「……え?」
「いや、何となくつけられているような気がしてさ」
サイドミラーを確認すると、確かに一台のバイクが真後ろを走行している。
大きく、反応した心臓。
――違う。秀人はバイクなんか持ってなかった。