恋色カフェ
反応しないつもりだった……けど。
紅潮している顔を見られたくなかったこともあって、私は結局、頷いてしまった。
そう言えば店長という人間は、わざとそういうことを訊いて私の反応を楽しむ、悪趣味な人だった。もう充分過ぎる位わかりきっていたことなのに、抗えない自分が悔しい。
この顔を上げたら、店長は勝ち誇ったように不敵な笑みを浮かべているのだろう。
――そう思っていたのに。
意外にも彼は困ったような、照れくさそうな、複雑な笑みを浮かべていた。
「正直言うと……俺も、緊張してる」
「……えっ」
「3年前は、こんな日が来るなんて、想像すらしていなかったからね」
店長は私の手を離し、傍らに置いていた煙草に手を伸ばす。正直に打ち明けて、急に照れくさくなったんだろうか。
私には、目を逸らすなって言ったくせに。
「……自分は、煙草に逃げるんですか」
「ん?」
「私のこと……恥ずかしくさせておいて」
「恥ずかしかったの?」
「……」
くすりと笑って、口に煙草を咥えながら私の髪を撫でる。その手が心地良いから、また始末が悪い。