恋色カフェ




我に返ったのは、私を見下ろす店長の顔が視界に入ったから。


どうしようどうしよう。ここで、するのかな。汗かいたからシャワーも浴びたいのに。


今まで停止していた思考が、一気に噴き出す。外に吐き出すことをしないせいで、頭の中はもう飽和状態。

気づけば、店長の唇は既に、違う場所まで下りていた。



「……っ」


声を押し殺そうと息を詰めているから、尚更吐き出せなくて、困る。


「……声、我慢しなくていいよ」


そんなこと、言われたって。


「聞かせて」


私を下から見上げる双眸に、ドキリとする。前に、私の家で見た店長とも違う。今まで見たことのない顔が、そこにあった。



「……大丈夫、ですか?」


何とか、私は思いついたままの言葉を吐き出した。


「……何が?」

「ご飯、食べなくて」


一瞬、動きを止めた店長がこちらを見据える。



「今、別なもの食べてるからいい」


別なもの、って……。

意地悪するように彼は、頂を攻める。私は思わず艶めいた声を上げてしまった。


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