恋色カフェ


「シ、シャワー浴びたい」

「……へえ」

「へえ、って」

「聞くだけ聞いとく」

「アイリッシュコーヒーだって、冷めちゃう……」

「後で、新しいの淹れてやるから」

「あの、ここだと、落ちそうだし……」


これ以上、欲に溺れた声を聞かれたくなくて、矢継ぎ早に言葉を投げかける。

店長は一度小さくため息を吐くと、体を起こした。



「……やめたい?」


髪を掻き上げる仕草が目に映って、そのあまりの色気に眩暈がした。


「彗が嫌なら、もうしないよ」


彼の指が、私の髪に触れる。そのまま頭を撫でられ、私は安心感と心地良さに包まれた。


「嫌じゃ……ない」


私の答えに、店長は淡く笑って。

私を引き寄せると、甘いキスを落とした。



「……俺が、今どんな気持ちでいるか、知らないだろ」


あっという間にまた押し倒され、瞼やら頬やらに、キスの雨が降り注ぐ。


「俺がどれだけ、彗のことが好きか……」


耳許で囁く声も、甘く。


「この気持ちを言い表す言葉が無くて、ずっと口に出来なかった」

「……、」

「不安にさせて、ごめんな……」



涙が一筋、私の頬を滑る。

店長はくすりと笑って、その涙を指で拭うと、優しく私の肌に唇を落とした――――……。


< 550 / 575 >

この作品をシェア

pagetop