恋色カフェ
前進
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目を覚ました、というはっきりした感覚はなかった。
境目も曖昧なまま、ずっと、夢と現実の間を行ったり来たりしていたから。
ぐるりと、体を真横に向けてみる。
隣には、穏やかな寝息を立てている店長がいた。
――良かった。
この状況は、ちゃんと現実だ。
今、何時だろう、と部屋を見回せば、カーテンの隙間から明け方を思わす光が淡く漏れている。
多分、ちゃんと眠ったのは、午前3時を回った頃だと思う。それまで私達は、何度も何度も、今までの分を取り返すように抱き合った。
店長を起こさないようにと、私はゆっくりした動作で、自分の鞄へ手を伸ばす。
(6時……か)
携帯の時刻表示が、容赦なく突きつける現実。
今日も仕事だから、もうそろそろ動かなければ間に合わない時間だ。
ふう、と小さくため息を吐き出し、私はなるべく揺らさないように気をつけながら、ベッドから起き上がった。
――このままでいられたらいいのに。
一瞬浮かんだ、絶対に叶う筈のない思いを心の隅に追いやり、私は床に散らばっていた下着を拾う。