恋色カフェ
勝沼君はレシピの紙を手に取り「まったく」と、大きくため息を吐いた。
「自分で取りに来てほしいっすよねー。俺も忙しいっての」
その言葉を聞いて――微かな懸念が心によぎる。
もしかして、避けられてる……?
「……店長は何、やってるの?」
胸が騒ぐ。
勝沼君はこちらに視線を向けて、呆れたような顔を見せた。
「いつも通りっすよ。あの人、悔しいけど無駄にカッコいいから」
話が見えず、私は首を傾げた。
勝沼君は視線を外して、一度軽く咳払いをすると、あー、と声を上げてから。
「高宮さんは、もしかして見たことないんすか?」
「何、を?」
「これが手っ取り早いな」と、彼はそう言って、こちらまで回ってきたと思えば、突然、私の腕を引いた。