恋色カフェ


勝沼君はレシピの紙を手に取り「まったく」と、大きくため息を吐いた。



「自分で取りに来てほしいっすよねー。俺も忙しいっての」


その言葉を聞いて――微かな懸念が心によぎる。



もしかして、避けられてる……?




「……店長は何、やってるの?」


胸が騒ぐ。

勝沼君はこちらに視線を向けて、呆れたような顔を見せた。



「いつも通りっすよ。あの人、悔しいけど無駄にカッコいいから」


話が見えず、私は首を傾げた。


勝沼君は視線を外して、一度軽く咳払いをすると、あー、と声を上げてから。



「高宮さんは、もしかして見たことないんすか?」


「何、を?」


「これが手っ取り早いな」と、彼はそう言って、こちらまで回ってきたと思えば、突然、私の腕を引いた。


< 62 / 575 >

この作品をシェア

pagetop