恋色カフェ
不意を衝かれて言葉にならない声を上げ、体勢を崩したまま勝沼君に連れて行かれたのは、一歩踏み出せばフロア、という場所。
「ほら、見て下さいよ」
「え……」
「店長がフロアに立つたびにああなんすよ」
物陰に潜む、怪しい私達。誰も来ませんように、と願いながら、勝沼君の指差す方向に目を向ける。
「あれはもう接客の域を超えてるっすよね」
目の前の光景に、胸が、疼いてしまった。
「店長は何人、お客をくえば気が済むんすかね」
そう言って「じゃ俺、戻りますね」と勝沼君はそのままフロアへと足を踏み出して行ってしまった。
取り残された私はただ、店長が女性のいるテーブルに着いて、仲良さそうに話しているところを見つめていた。