恋色カフェ
「……お疲れ、さまです」
コーヒーを無事に喉の奥に追いやり、俯いてそう返す。マグカップを置いたから俯いているんですよ、と心の中でアピールしながら。
ギィ、と事務椅子が軋む音がする。ソファーに座らなかった、と言うことは、店長は当分ここにいる気なんだろうか。
訪れた、静寂──。
こんなのはいつものことだけど、今日はこの静寂がキツイ。
かといって、私から何かを話すなんてこと、出来る訳がない。
それに、この厄介なモヤモヤ。
今、口を開いたら、余計なことを言いそうで怖いのだ。
5分程して、また店長の椅子がギィ、と鳴ったかと思えば、
「高宮さん」
私の名前が呼ばれた。