恋色カフェ
店長の言葉に、いちいち動揺している自分が面倒臭い。……落ち着け、私。
「俺のこと、見てほしいんだよ」
気がつけば、店長は私の机のすぐ側まで来ていた。
ふわりと鼻を掠める、甘い、シークレットの香りに胸が掻き乱されそうだ。
「……森谷店長のことを見てる人は、たくさんいるじゃないですか」
「ん?」
「さっきだって……女性のお客さんと仲良さそうだったし……」
言ってから、襲ってきた後悔。やってしまった、と。
さっき、余計なことを言いそうだと、自制したばかりだったのに。
「見てたのか」
店長は机の上に手をついて、私の顔を覗き込んでいる。
かろうじて、私は視線を逃がした。