恋色カフェ


「そう言うってことは、」



左頬を、店長の指が撫でていく。ゾクリ、と身体の芯が震えた。



「期待しても、いいってこと?」



胸の震えに耐えきれず、ギュッと目を瞑る。

もう、無理だ。多分、いや間違いなく私はこれ以上抗えない。


何となく、森谷店長が近づいた気配がする。

どうしよう。どうしよう。



2人の間に流れていた得も言われぬ空気は、ノックの音で一瞬にして掻き消された。



「……はい」


私から素早く離れると、店長は落ち着いた声色で返事をする。


「失礼します。あ、店長、さっきの持ってきました」


「土屋さんなら間違いないだろうから、あとそれは高宮さんに渡して」



お願いね、と万由さんは私に紙を手渡して、扉へと向き直った彼女は、嬉しそうに笑みを零した。



──そうだった。

店長を見ている女性は、もっと近くにもいたんだ。


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