恋色カフェ
それからすぐ。
森谷店長は他のスタッフに呼ばれ、私の終業時間まで事務所に戻ってくることはなかった。
「お疲れー。あれ、まだ終われない感じ?」
万由さんはタイムカードを押しながら、こちらに顔を向けてそう言う。今日の上がりは万由さんと同じ時間だったから、気遣ってくれているのだろう。
「溜まってた書類、全部片付けたと思ってたんだけど、見てなかった引き出し開けたらごっそり出て来ちゃって」
「うわー、それショックだね。
確かにうちら、理英さんいなくなってから、伝票とか適当に突っ込んじゃってたから」
万由さんは、ごめんねー、と顔の前で手を合わせている。
ううん、と返しながら、今ちゃんと笑顔を作れているだろうか、と少しだけ不安が頭を掠めていた。