恋色カフェ
扉が閉まるのと同時に、ソファーへ、店長がドサリと体を沈めた音がした。
一瞬だけ、視線で店長を捉える──と、そこには、ポケットから煙草を取り出し、火を点ける姿。
ドクン、と胸が鳴る。やっぱり、さまになってる。
……腹立たしいくらいに。
こんなにも、たくさんの女性をその気にさせるこの人が
私の心の中に、厄介なモヤモヤを作り出させる、この人の存在が
恨めしくて、仕方ない。
「高宮さん」
そして、まるで宥めるように、彼は優しい声色で私を呼ぶのだ。
「何、でしょうか」
店長は私の強張った声に気づいたのか、紫煙を吐き出しながら笑っている。
「そんな、警戒しなくてもさ」